ごろごろビシャーン

がんばります

上手な人の傷つけ方

人が一番嫌がることってなんだろうか。

嫌なことって色々ある。死ぬ、知らないオッサンに触られる、殴られる、大事な物を失くす……じゃあ、一番は?

僕は、「わからない」ことだと思う。(殴られるとか、肉体的に嫌なことは今回は論外とする)

死んだあとって、どうなるか分からない。骨になって、土になっていくのは分かる。でも、この心は、この魂の行き先は、誰にも分からない。

知らないオッサンに触られると、どうなるか分からない。すぐには終わらないだろう。いつまで続くんだろう。もっと嫌なことをされたらどうしよう。

物を失くすと、どうなるか分からない。別に、コモディティならいいんだけど。大事なものを失くしちゃったら、どうしよう。なくなった分をどう埋め合わせよう。それとも取り戻せるだろうか。

一番怖いのは、自分の人生の意味が、自分の意味が分からなくなることだ。 それはつまり絶望であり、精神的死である。

けど、落ち着いて考えてみよう。 分からないことって沢山ある。もしかすると、世界には分かることの方が少ないかもしれない。きっとそうだろう。 けど、僕たちは生きている。

なら、この「嫌さ」の本質って、なんだろうか。

それは、「自分を客観化してしまったとき」じゃないだろうか。 僕たちは、僕たちの観念――「分かっていること」で構成された頭の中の世界――の中にいるとき、安心する。身の回りのことはだいたい理解していて、大体自分でコントロールできる。車は前に進むし、家には温かい布団がある。明日もきっと同じ日が続く。そう信じられる日々は、安心できる。(かえって将来が不安になるかもしれないけれど)

しかし、突然その連続性が破られると、とても怖い。自分の観念は不完全だったことに気づかされ、頭の中の世界の再構築を余儀なくされる。どこが間違ってたのか分からないから、いろんな物事を疑わなきゃいけなくなる。そのとき、人は孤独になる。そして、自分すらも疑ってしまったとき、人は絶望する。これが(精神的に)一番恐ろしいことだ。

たとえば、「死」っていう概念は、自分の「生」っていう概念をぶち壊してくる。僕たちは「生」の中で生きていて、「死」という世界を知らない。だから、明日も明後日も生きていると思っていて、だから安心してご飯を食べたり、遊んだり、あるいは将来に備えて勉強したりできる。けれど、「死」について考えてしまったら、どうだろう。明日死ぬかもしれない。1時間後かも知れない。まさに今来るかもしれない。そう思うと、今生きている「生」という世界を疑わなきゃいけなくなる。つまり、自分の世界から出てきて、見つめなおさなきゃいけなくなる。これが「死」の恐怖だ。

思い出したくもないような体験って、誰しも一つや二つあると思う。それらはきっと、かつて自分の世界を打ち砕いたものごとじゃないだろうか。

さて、主題に入ろう。

上手に人を傷つけるにはどうしたらいいだろうか。

ここまで読んだ方はお分かりだろう。相手の世界をぶち壊して、相手を客観化してしまえばいいのだ。

単に、「バカ」だとか、「マヌケ」だとか言って、自分の価値観を押し付けるのでは三流である。相手自身に、相手自身を疑わせること。これが肝要なのだ。

世界一有名な嫌われ者がいる。ソクラテスだ。彼は問答法で、人々の観念――内的世界を破壊し続けた。こんなやつ、嫌われて当然だ。

人の観念は脆い。まずは自分に試してみよう。

「自分の好きなものは?」「なぜ好きなの?」「どこが好きなの?」「他の物とどう違うの?」「答えられないの?」「それって本当に好きなの?」

どんどん自分に聞いてみよう。自分の考えが(この例えでは好きな気持ちが)分からなくなってはこないだろうか。あるいは、自己分析などを通して、そうなった経験はないだろうか。きちんとやれば、そうなるはずだ。 恋人には倦怠期というのがやってくる。これは同じメカニズムで生じる。しばらく付き合って、「本当にこの人でいいのか」と自分に問い続ける。すると必然、自分の気持ちが疑わしくなってくる。これは当然の帰結であり、その処方箋は「いかに自分の観念にしがみつくか」ということである。

尚、これはある種の人間には効かない。視野が狭窄で、自身を客観視できない人間だ。誰しも心あたりがあるだろう。逆に、敢えてそうあることで、自身の内的世界を守る者もいる。これは唯一の防衛策であり、残りの選択肢は、新たな侵入者を食ってやるか、食われるかということである。

さて、まとめに入ろう。

蟻の穴から堤も崩れるという。人の心は、そういうものです。

穴を見つけたら、つついてやりましょう。

「へえ、ブログとかやってたんだ、意外」「こういうことよく考えてるの?」「誰か読んでるの?」「ふーん」「なんか、うん」「ちょっとよくわかんないw」「てか、イタイw」 僕は今まさに、頭の中で突かれています。しんどい。うるせーばか!死ね!